研究概要 |
1.相分離型状態図をもつ金属(AgまたはAl)/非晶質半導体(GeまたはSi)系2層膜を,状態図の2相領域内でアニールした際の組織変化について,走査型電子顕微鏡法(SEM),オージェ電子分光法(AES),透過型電子顕微鏡法(TEM)などにより調べ結果,次の事柄が明らかとなった. (1)表面側の金属層と基板側の半導体層の逆転が起きるが,2層構造自体はかなり安定である. (2)表面に現れたSiあるいGeは,特異な形態(パターン)を示す結晶性クラスターを形成する. (3)同じ系の2層膜でも,金属層と半導体層の相違的な厚さの違い,金属層の結晶粒サイズの違い,作製法の違い(真空蒸着かスパッターか)などにより,パターンは微妙に異なってくる. 2.スピノ-ダル分解により微細な変調構造の形成が見られるFe/Mo合金の2層膜を作製し,スピノ-ダル領域内でアニールした際の組織変化について,SEM,AES,TEM,X線回折などにより調べた結果,次の事柄が明らかとなった. (1)特異なパターンを示すクラスターが形成される. 2)このクラスターは,Fe-Mo2元平衡状態図には存在しないL1_0構造を有するFeMo相と推定される. (3)さらにアニールを続けると,非平衡FeMo相の形成と成長は停止し,Fe-Mo状態図に存在する平衡(安定)相μの形成が始まる. 3.Fe-Mo系2層膜の組織変化について組織自由エネルギー理論に基づく理論的検討を行った結果,非平衡FeMo相および平衡μ相の形成は,自由エネルギー的に十分起き得る現象であることが分かった.
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