研究概要 |
金属をエピタクシアル成長させた際、基板や下地層の格子に抱束され、積層した金属が非常に大きく歪んだり,極端な場合にはバルクの安定相とは異なる結晶構造をとることがある.本研究は,超高真空下でのエピタクシアル薄膜・人工格子の作製を通して,新物質を創製したり,構造変化を系統的に観察して,基板抱束による相変態の様子を理解することを目的とした. MBE法により,2×10^<-10> Torr以下の超高真空下で,Si(111)清条旗万丈にAGバッファー層,Auおよび,Cuシ-ド層を積層し,これらの上に人工格子を作製した.成長中にRHEEDパターンをCCDカメラを通じてビデオ録画し,ストリーク間隔の変化を詳細に解析することで,連続的に膜面内の格子間隔の変化を評価した. (a)TM=Co,Ni/NM系;TM/Au系ではTMの膜面内の格子間隔は,積層膜厚とともに連続的な減少を示したのに対し,TM/Ag系では不連続な変化を示した.Au,Agの原子半径はほぼ同じで,TMに対して約13%の格子ミスマッチである.TM/Ag系では大きな歪みがTM層に導入され,積層膜厚とともに徐々に解放されたのに対し,TM/Ag系では歪みが生じず,ミスフィット転位が界面に集中したため,前述のような変化を示したと考えられる.Co/Au人工格子では大きな歪み構造に起因した,垂直磁気異方性を確認した. (b)Cu/NM系;Cu/Au系ではCuの格子間隔は緩やかで連続的な減少を,Cu/Ag系では急峻な減少を示した.前述のTM/Au(TM=Co,Ni)系は2相分離系であるのに対し,Cu/Au系は全率固溶系であることから,界面付近にミキシング層が形成され,組成の連続的な変化により,格子間隔が徐々に変化し,2相分離のCu/Ag系ではミキシング層が形成されず,急峻な変化を示したと考えられる.
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