研究概要 |
相変態に伴う結晶構造の変化がわずかな場合、結晶の歪みを緩和するように結晶内に双晶が生じ、特徴的な組織を示す。この双晶の示す組織は、相変態の前後の対称性によっている。この時生じる多重双晶が造る組織は、いわゆる回位と呼ばれる結晶欠陥と考えて良い。はじめて見いだされたのは、MgCd合金のhcp最密構造からB19構造への相変態の組織についてである。この場合hcp構造のc軸が回位腺に平行である場合のみが考えられ、予想通りの回位が実際に結晶中に見いだされた。このMgCd合金の場合には、この合金特有の星形回位が見いだされた。 この研究ではCuPt合金を調べた。この合金は対称性がfcc構造から菱面体L1_1型構造に相変態する。この場合MgCd合金の場合と異なって、線状回位を考えるだけでなく、立体的な回位を考える必要がある。このような場合の双晶組織を調べることを目的とした。 この合金の場合、回位線は結晶学的に三種類考えることができ、fcc構造の指数で、〈100〉,〈110〉,〈111〉である。各々十、四、三種類づつ考えられる。回位の大きさを角度で表すと、それぞれ、0.0が一、2.0が五4.0が四種類、2.8が二,5.6が二種類、3.6が二,7.2が一種類づつである。実際に結晶中に見いだされたのは、0度の回位のほか、2度の回位が五種類である。結晶内の分布を調べたところ、大きさ2.0度の符号の異なる回位が、およそ100nm離れて存在することが分かった。 互いに平行でない線状の回位が結晶中に存在する場合を考えると、もし大きさが等しいか、ほとんど等しい二本の線状回位の場合には、欠落の体積と余分な体積がちょうど相殺するため、結晶中に見いだされる可能性がある。この組み合せについて今後検討する必要があることが分かった。
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