研究概要 |
合金の水素吸蔵特性と相構造との相関を研究した。合金の相組織が水素化挙動に与える影響を,平衡水素吸蔵特性と反応速度特性について調べるとともに,マクロな相構造の差が水素化に伴う相変態挙動にどう影響するかを調べた。特に,高い歪みを特ち,熱力学的に非平衡な相について調べ,新規水素吸蔵材の可能性と水素吸蔵量を規定する因子について研究した。 [結果]チタン-ニッケル系合金を蒸着によって薄膜化し,電気化学的手法により水素吸蔵特性を調べた。薄膜合金は膜厚が薄い場合には歪みが大きく,水素吸蔵のPC曲線の傾きが大きくなるとともに,水素化に伴う相変態が固溶体生成型に近くなった。このことは,合金組成が同じでも,格子歪みの違いによって水素吸蔵量や水素解離圧に大きな違いが出ることを示している。そこで,特に格子歪みに注目し,歪みと水素化特性の相関を明らかにするために,微粒子分散型合金を用いて水素吸蔵特性の測定を行った。窒化バナジウム(VN)微粒子を分散させたα鉄は,窒化物を分散させないものと比べて7%程度格子が膨脹するとともに,水素の固溶度が10倍以上となり,室温での水素吸蔵量は,H/Mで約0.08程度となった。同様な窒化物粒子による歪みはチタンの窒化物(TiN)でも導入可能であり,いずれの窒化物を分散させた場合でも,分散物の濃度にほぼ比例して水素吸蔵量が増大した。以上により,大きな歪みを持った非平衡相合金において,新規な水素吸蔵材料が発見できる可能性があることが示された。
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