研究概要 |
グラファイト及びその層間化合物は様々な機能性材料として有用であり、グラファイトにかわる新しい二次元pi電子系を創出することは新機能性材料開発において極めて重要である。本研究は、ホウ素と炭素からなるグラファイト類似二次元ネットワーク有する金属ボロカ-バイドRB_2C_2、RB_2C(R:アルカリ土類、希土類)を合成し、その電子状態を明らかにすることを目的とした。本年度はRB_2C_2のうち、R=Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tmの各化合物の多結晶体を合成し、その磁化率、磁化曲線、および熱容量の測定を行い、磁気相転移の性質を明らかにした。これらの化合物の磁気相転移温度はR=Gd(45.5K),Tb(23.5K),Dy(24.5K,15.0K),Ho(5.9K,5.1K),Er(14.6K,13.0K),Tm(15.5K)であった。GdB_2C_2およびTmB_2C_2は単純な反強磁性体であるがTbB_2C_2は面内容易軸のらせん磁性体であった。また残りの化合物ではそれぞれ二つの相転移が熱容量により認められ、磁場中熱容量測定の結果から、DyB_2C_2、HoB_2C_2の高温側の相転移は磁場にほとんど依存しない磁気四重極転移であり、低温部の相転移は弱い自発磁化を伴う反強磁性であること、またErB_2C_2の二つの相転移は反強磁性相間の逐次相転移であることを明らかにした。LaB_2C_2,CeB_2C_2の二つの化合物については本年度導入した単結晶育成用アーク溶解炉を用いて単結晶育成を試み、得られた結晶のラウエ写真により単結晶性を確認した。また、電気伝導測定を行い、いずれの結晶も残留抵抗比が約25、低温における残留抵抗率が0.7μΩcmとなり、低温高磁場でシュブニコフ・ドハース振動が観測されうる程度の良質な単結晶がえられた。これによりこの化合物群の電子状態の研究が大いに進むものと思われる。
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