研究概要 |
電子の電荷のみならずスピンまでも有効利用することが注目されているが、本課題では更に一歩踏み込んで核スピンの濃度と分布までを制御した半導体構造の作製を行った。半導体元素は一般的に^<29>Si,^<73>Ge,^<71>Ga,^<75>As等の核スピンを有する同位体と、^<28>Si,^<74>Ge等の核スピンを有しない同位体が一定の比率で混合した組成をもつが、本課題では分離された^<73>Ge(スピンあり)をロシアから入手し、帯精製法により不純物を取り除いた後、アモルファ^<73>Ge薄膜を作製した。電子磁気共鳴(ESR)によるスピン物理の評価では、^<73>Ge膜中では不対電子と核スピン間の超微細構造相互作用が非常に強く、通常の不対電子欠陥によるg=2.0016のピークが消滅している。これは超微細構造により1本のピークが10本に分かれて強度が大幅に落ちているためと考え、それらを見出すための高感度・高解像度測定を現在続けている。 又、^<29>Si(スピンあり)と^<28>Si,^<30>Si(スピンなし)を利用した核スピンの濃度と分布が制御された超構造を作製するために、その原料となる^<30>Siをロシアから入手した。Si同位体材料を精製するためのフロートゾーン型の結晶成長装置は現在注文済みであるため、来年度からはSiの精製に着手する。
|