研究概要 |
本研究では,適応的なソフトウェアを開発するために必要なソフトウェア構造と,開発方法の研究を行う.本研究のソフトウェア構造は,自律的なモジュールの連携によるシステム開発を基礎とする.既存プログラムの環境適応化については,既存の大規模プログラムに対して環境への適合化技術を開発しツールの試作をする.さらに,新規のシステムの開発の方法論の研究では,形式仕様を基本として,増分的な仕様の検証,自律モジュールの生成,及び試験とデバッグについてのツールの試作と評価を行う.今年度は,このうち,自律的なモジュールの動作環境の構築と,既存プログラムの環境不適合部分の切り出しに焦点を当てた. 動作環境については,自律モジュール間通信機構としてタプルスペース型通信を採用した.今年度は,タプルスペースの複製配置と一貫性管理方式について,定数合意方式に非同期更新を拡張した方式を提案した.これは,ロック操作の必要のない,既存の方式よりも軽い方式である.また,その性能についてシミュレーションと実装の両面から評価した.現在は,JAVA言語からこれを利用できるように開発を進めつつある. 環境不適合部分の切り出しについては,プログラムスライシング技術を採用した.今年度は,これを既存の大規模ソフトウェアに対処できるように並列化する方式について検討し,予備的実験を行なった.並列化にあたっては,まず,複数ある既存のスライス計算アルゴリズムそれぞれを並列化することの特質について検討し,有効だと思われる2つのアルゴリズムについて簡単な実装を行った.次に,実測実験をなうことによって,より効果の高いアルゴリズムを採用することを決めた.現在は,より効率の良いアルゴリズムを開発中である.
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