研究概要 |
インターネットの発展によって,世界規模の計算機網が維持する多様な計算資源や豊富な情報を,一般ユーザが高度に統合化された形態で利用できる時代が見えてきた.現在においても,WWWや分散データベース等,インターネット上で動作するソフトウェア(以下,分散ソフトウェア)が開発されて来ているが,ATM技術などを用いた高速計算機網が普及するに従って,さらに緊密で高度な協調に基づく分散ソフトウェアが今後ますます求められる. 分散ソフトウェアは,(1)広域計算機網の形状は急速に変化するが,形状の動的な変化に関わらず正しく動作しなければならず,(2)広域計算機網ではその複雑さゆえ様々な故障が起こるが,様々な故障に耐えて正しく動作しなければならず,(3)たとえ形状変化や故障が起こらないと仮定しても,分散ソフトウェアは他の多くの分散ソフトウェアと広域計算機網を共有するので動作環境は刻々と変化するので,動作環境に自律的に適応できなければならない.すなわち,分散ソフトウェアは自律的な発展・適応機能を内在していることを求められる.本研究では,上記の(1)-(3)について以下のような成果を得た. 1.一過性の故障に耐えて自律的に正常な状態に復帰できるようなアルゴリズムを自己安定アルゴリズムという.自己安定アルゴリズムには,全体を初期化しなくても正常に実行を開始できるという長所もあるので,広域計算機網には最適なアルゴリズムである.理論構造としてリングを持つ場合に方向付け問題と相互排除問題を解決する自己安定アルゴリズムを開発した(文献3,5). 2.コーラムを用いて同期問題を解決する方式を検討し,いくつかの知見を得た(文献2,4). 3.広域計算機網では,各プロセスは現在の大域的な状態を知ることなしに,局所的な状態から適切な次の行動を選択する必要がしばしば起こる.例えば,停止性判定問題やデッドロック検出問題はメッセージ通信を用いて,局所的な状態から大域的な状態を推察する代表的な問題である.このような問題を動的問題と呼ぶことにする.代表的な動的問題である動的探索について検討した(文献1,6).
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