当該研究計画では、超対称統一理論において超対称性が部分的に破れる際の有効相互作用について、その低エネルギーでの振る舞いに焦点を当て研究を遂行した。特に、N=2超共形対称牲が、N=1超共形対称性またはN=1超ポアンカレ対称性に自発的に破れる場合について非線形実現の方法を用いて有効相互作用を調べた。その結果、自発的破れに伴って現れる南部・ゴールドストン粒子がN=1のsupermultipletを形成し、それらの間の相互作用を記述する有効ラグランジアンが求められた。この研究成果は、学術論文として発表した(Phys.Lett.B420(1998)69-76)。また口頭では昨年9月に東京都立大学で開かれた物理学会と、11月に京都大学基礎物理学研究所での研究会「超対称性の新展開」で発表した。このようにして得られた有効理論に基づいて、標準模型を越える超対称標準理論(MSSM)に対する現象論的帰結や、超対称性のダイナミカルな破れと双対性との関係、さらにCP不変牲、コンフォーマル不変性等他の対称性に及ぼされる効果等の諸問題を今後包括的に検討したい。本計画の実施において、国内各地とりわけ、東大・広大・横浜国大、またドイツ・マックスプランク研究所の関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。特に、来日中の B.ランペ氏とは、標準理論を越える超対称性理論に登場する新たな粒子に関する研究・討論を行った。尚、予算執行としては旅費の他、資料整理ための謝金、論文作成に必要なポストスクリプト対応のプリンターやパソコンの増設メモリおよびソフトを購入した。
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