1.Pd_<0.08>Cs_<2.5>H_<1.34-x>PVMo_<11>O_<40>触媒による水素共存下のメタン酸化反応 酸素のみで反応を行うと、完全酸化反応しか進行しなかった。この系にさらに水素を添加すると、ギ酸・メタノール及びCOxが生成した。主生成物はギ酸であった。メタン転化率、ギ酸選択率共に反応後約2時間後に一定となった。反応は120℃から進行した。反応温度と共に転化率は上昇し、300℃で最も高くなった。一方、主生成物であるギ酸の選択率は単調に低下した。この結果、ギ酸収率は300℃付近で最大となった。 Cs_<2.5>H_<0.5>PMo_<12>O_<40>では完全酸化反応のみが進行した。一方、これにPdを添加するとギ酸が生成した。従って、ギ酸生成にPDは必須である。Pdが酸性条件下H_2とO_2から過酸化水素を 生成すること、ヘテロポリ酸セシウム酸性塩は強酸性を有することを考慮すると、本反応系ではPd上でH_2とO_2から過酸化水素が生成し、それ自身あるいはそれから生成した活性酸素種により反応が進行していると考えられる。実際、H_2とO_2の代わりに過酸化水素を用いて反応を行うとギ酸が生成すること、Pd同様H_2とO_2から過酸化水素を生成するPtでも本反応に活性を示したことは、この考えを支持している。 2.過酸化水素を酸化剤とするメタンの液相酸化 過酸化水素を用いるとメタンの選択酸化は(CF_3CO)_2Oの溶媒中、80℃で進行した。中でもH_4PVMo_<11>O_<40>の活性が最も高かった。ギ酸やギ酸メチルなどの部分酸化物への転化率は33%に達成した。使用した溶媒の中で(CF_3CO)_2Oが最も高いメタン転化率(33%、ターンオーバー数(TON)=260、過酸化水素有効利用率約90%)を示した。今まで報告された転化率及びTONはそれぞれ0.03^〜8%および5^〜513である。我々の値はこれらの値と比較して高い方に属する。(CF_3CO)_2Oを溶媒として用いるとギ酸メチル、ギ酸、トリフルオロ酢酸メチル、メタノール、エタンおよび二酸化炭素が生成し、ギ酸メチルが主生成分であった。(CF_3CO)_2OはCH_3OHやH_2O_2と反応し、それぞれ酸メチル、トリフルオロ酸酢酸の安定なエステルを生成することが報告されている。さらに使用した溶媒中では、(CF_3CO)_2Oのメタン溶解度が最高であった。これらのことが、(CF_3CO)_2Oが最高のメタン転化率を与える理由と考えられる。
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