研究概要 |
[研究目的]豆腐製造およびビール製造などの食品工業では大量の有機系固形廃棄物(副産物)、高濃度の有機廃液を生じる。本研究では、豆腐工場、ビール工場の現状のエミッションとその処理法を把握すると共に、有機系固形廃棄物に関して高比表面積活性炭など機能材料化および最終的にメタン発酵によってエネルギー化を計る、また有機廃液に関してもメタン発酵、酵母培養、液肥化など多面的な有効利用によってゼロエミッション化を目指す。 [研究方法および成果](1)食品廃棄物からの活性炭の製造:現在入手している食品廃棄物、おから、ビール滓、コーヒー滓、酒粕、茶殻を原料として、薬品賦活法による比表面積の大きい高機能活性炭の製造を検討した。おからを原料とする場合にはK_2CO_3を用いる薬品賦活法によって、比表面積が2000m^2/g以上の高比表面積活性炭を製造できた。ビール滓、コーヒー滓、茶殻、酒粕を原料とする場合も、KOHあるいはK_2CO_3を賦活剤として、比表面積が2000m^2/g以上あるいはそれに近い高比表面積活性炭が製造できた。薬品賦活法では粉末活性炭が製造されるが、さらに廃糖蜜をバインダーとして、この粉末活性炭より市販の活性炭相当の吸着性能を有する粒状炭を製造した。製造した活性炭は、有害物を含まず、高機能吸着剤あるいは食品工業などで使用できる。 (2)メタン発酵によるおからのエネルギー化:おからを懸濁させた基質を用い、有効容積1lのガスリフト反応器を用いて、1日1回の投与、滞留時間20日による反復回分操作を行った。CH_4,CO_2,IC,VFA,TOC(IC以外),菌体,残留固形分からなる生成物の分布を炭素(C)基準で正確に評価した。基質負荷のメタン発酵性能への影響を検討した結果、0.9〜1.3g/l/dayの負荷の範囲でメタン転換率は理論値(C基準で55%)に近い値を示し安定に操作できることが分かった。しかし、さらに負荷を増大すると、未消化の固形分が増加するため操作不能になった。さらに、ルーメン細菌との混合菌を用いて難分解のセルロース成分の分解を促進する方法についても検討した。 (3)食品工場におけるエミッションの実態調査:豆腐工場およびビール工場の原料から製品に至る物資収支を調査し、両プロセスにおける、エミッションの質と量、現状での処理法を明確にした。
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