研究概要 |
内容積1lのハステロイC製分取式オートクレーブに水又はNaOH水溶液450mlを仕込み,密閉後窒素置換しモノマー換算0.005mol)を容器内に圧入して温度安定後反応開始とし,NaOH濃度0〜2M,200〜250℃,1200rpmでかきまぜた.所定時間毎に分取した反応溶液中の塩化物イオン濃度を測定して脱塩化水素率を求め,残留物は,減圧乾燥後SEM観察およびFT-IR測定した. 水中,200〜250℃でのPVC粉末の脱塩化水素反応は見掛け上0次反応で進み,活性化エネルギーは約46kcal/molであった.一方,NaOH水溶液中では脱塩化水素は見掛け上1次反応で進み,速度は0.01〜0.5Mの範囲では濃度の増加と伴に大きくなった.活性化エネルギーは0.1M,0.5Mでも各々46kcal/molであり,濃度による違いはなかった.また,残留物の化学構造もFT-IR測定では,大きな変化はなかった.しかし,水中における残留物は凝集しており,表面には比較的大きい細孔が生成したのに対し,NaOH水溶液中ではほとんど凝集せず,球状で,細孔は表面上にはなく,粒子内部に認められた.以上より,水中とNaOH水溶液中では脱塩化水素そのものの機構は大きく変化せず,NaOH濃度は形状に大きく影響すると考えられる.つまり,水中では脱塩化水素速度が小さいため溶融PVC粉末が凝集して細孔が多く生成する.それに対し,NaOH水溶液中では,PVCが球状になり,濃度に比例して急速に表面の脱塩化水素が進み,膨張しにくい脱塩化水素PVCの殻が表面に形成され,これが粒子の凝集を防ぎ,球状の粒子内では生成する塩化水素によって内部の脱塩化水素が一層触媒されるため見掛け上1次で進むように見えるものと推定した.また,脱塩化水素率の高い残留物には,水酸基による吸収が存在することから,この場合は,一部HとClの置換により脱塩素が起きるとことを明かにした.
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