研究概要 |
HPLC(高速液体クロマトグラフ)とICPMS(誘導結合プラズマ質量分析計)を直結した計測システムを用い,イネのカルスを試料として,植物が受ける重金属ストレスの評価法開発を目的とした。研究成果は以下のようにまとめられる。 1.単一金属の効果:カドミウムと銅の添加ではフィトキレチン(PC)が誘導されたが,水銀と亜鉛では誘導が見られなかった。金属とSH基の比はカドミウムと銅で顕著に異なり,これは金属とPCとの結合強度を反映するものと解釈できる。 2.フィトキレチン同族体の分離:PCは(γ‐Glu‐Cys)_n‐Glyの構造をもつ。カドミウムおよび銅ストレスにより誘導されるPCを逆相HPLCで詳細に定性定量したところ,カドミウムの場合はnが1〜5のものが誘導されるのに対し(n=2〜4が多量),銅の場合は大半がn=1のPCであった。これは,上記に関連する結合強度と,金属の配位数に注目して合理的に解釈できる。 3.Cdと他の金属との共存効果:Zn,Cu,Pb,Hg,Ni共存下でのPC誘導挙動を調べたところ,単独ではPCを誘導しない金属も,濃度が高いとCdによるPC誘導を抑制することが判明した。効果はとくに水銀で顕著であり,これは複数金属の共存による重金属耐性の低下を反映すると考えられる。 以上の結果は,植物の重金属ストレス評価法の確立につながるものである。
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