研究概要 |
研究目的水環境中の毒性物質の中には、既往の水処理システム、生物処理では分解できないものがある。ここでは対象物質として、昨年度人間の排泄物中に存在する発癌性のヘテロサイクリックアミンにオゾン、オゾン+紫外線、光酸化触媒による化学酸化の効果を検討した。この中でし尿の生物処理水のような着色水にはオゾンによる脱色過程があって、紫外線照射が効果がでてくることが示唆された。最終年度は、河川水中にその痕跡が認められるニトロアレーン由来の遺伝毒性が、道路表面から雨水を通して下水処理場や河川に流入してくるプロセスを想定し、その終末処理での化学分解を試みた。 化学酸化法2Lの円筒型容器に対象とする多環芳香族化合物,およびそのニトロ誘導体を150から200μg/Lに調製して、オゾン40NL/hrs、紫外線3200-5600μ W/cm^2を照射した。各物質の分析はHPLCでメタノールをキャリアとして蛍光検出器で測定した。副生成物を測る場合にはUV検出器で測定した。オゾン濃度は酸性ヨウ素法で定量した。またOHラジカルはDMSOをプローブとしてメタンスルフィン酸を生成する。これをFast Blue BB saltで定量した。 結果道路上の塵埃中には、74μm以下の粒子上に高い遺伝毒性が存在することが明らかとなった。 そこで、多環芳香族化合物で排ガス中に同定されている3物質Benzo(a)pyrene,Benzo(b)fluoranthene,Fluorantheneの分解した。BaP,BbFにおいてはオゾン単独処理の場合よりも紫外線を併用した場合がより分解が早いことがわかる。BaPは5分で、BbFは10分でほぼ消失することが示されている。Fltはオゾン単独、オゾン+紫外線によらず約2分で消失することが示されている。一方、1-nitropyrene,1,3-dinitropyreneはオゾン単独、オゾン+紫外線の間に大きな差は見られなかった。1-NPに関しては最終的に消失するまでにオゾン単独が24分、紫外線併用が12分であり、ある程度分解が進んでから紫外線併用型の効果が表れてくることが分かった。いずれにせよ、ニトロ誘導体の場合は比較的分解速度が遅いことが示唆された。
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