研究概要 |
オゾン処理は悪臭除去のために用いられ、その主体はhydroxyl radical(・OH)と考えられている。水中溶存物質と・OHの反応によるオゾン処理効率への影響、有害物質生成の可能性が憂慮されているが、測定法の欠如からオゾン処理におけるラジカル反応の定量解析、溶存物質の影響解析は為されていない。本研究では、ラジカルを直接検出する唯一の方法である電子スピン共鳴法ESRを用い、1)オゾン処理時に生成する・OH量に及ぼす溶存有機物の影響解析、2)有機物から生成するラジカル中間体を解析した。フェノール類を代表的な溶存物質として用い、スピントラップ剤DMPOを用いて・OHを測定した。 1)オゾン処理後、DMPO-OH量は反応時間と共に徐々に増加し、その生成初速度もオゾン濃度依存的に増加した。このDMPO-OH生成初速度は、フェノール類添加により顕著に増大した。その増強効果はクロロフェノール類がメチルフェノール類に比べて大きく、置換基により異なる傾向を示した。 2)2,3-、2,5-、2,6-dichlorophenol及び2,4,5-、2,4,6-trichlorophenolから、p-semiquinone radicalが生成した。ESRパラメータ解析から、オゾン処理によりpara位が水酸基に置換されることが示唆された。また、このセミキノンラジカル生成は・OHス消去剤の添加により抑制されたことから、・OHがセミキノンラジカル生成に関与していることが示唆された。 セミキノンラジカルは、フェノール化合物からのプレダイオキシン生成の中間体と考えられている。またパラコートの毒性発現に見られるように、キノンサイクルでの活性酸素生成により毒性が増す可能性も示唆される。・OH生成速度増強あるいはプレダイオキシン生成におけるセミキノンラジカルの役割の解明が今後の課題として残された。
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