研究概要 |
本研究の目的は赤血球の分化成熟に、NF-E2転写因子群がどのような役割を果たしているかを明らかにすることである。我々は、ヒトMaf G,Maf Kがp45関連因子Nrf1及びNrf2とヘテロ二量体を形成し、NF-E2配列に結合し転写を制御することを初めて明らかにした。しかし、Nrf1のパートナーは小Maf蛋白だけでないことが強く推定されたため、Yeast two hybride systemを用いてNrf-1の未知のパートナーをcDNAクローニングした。ヒト赤白血病細胞株K562のライブラリーをスクリーニングし約600個のクローンが得られた。今までに、約200個塩基配列の解析を行い、Nrf1のパートナーの可能性があるクローンが4つ得られている。このうちの3つのクローン(KIAA0182,CREB2,TCFL4)はロイシン・ジッパーをもつ分子をコードしていた。ロイシン・ジッパーの部分を除いたNrf1のBaitプラスイドとこれらのクローンをそれぞれYeastに形質転換してもHIS(-)の培地で増殖しないことから、これらの分子はいずれもNrf1とロイシン・ジッパーを介してヘテロ二量体を形成することが確認された。最後のクローンは興味深いことにRNA polymerase IIのサブユニットの一つであった。また、小mafは一つも単離されなかった。以上のことから,p45関連因子であるNrf1は小Maf以外の蛋白とbZip領域を介してヘテロ二量体を形成している可能性が強く示唆された。これらのヘテロ二量体はNF-E2配列を認識して結合し、NF-E2配列を介する転写制御に直接関わっている可能性がある。またもう一つの可能性としては、このヘテロ二量体がNF-E2配列とは異なるDNA結合配列を認識するためにNF-E2因子群からNrf1を奪う形となり、間接的にNF-E2配列を介する転写制御に抑制的に働いている可能性がある。
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