研究概要 |
Tecは我々が1990年に遺伝子クローニングを報告したチロシンキナーゼであり、造血幹細胞に発現が豊富なことが知られる。本研究計画において我々はサイトカインによる細胞内シグナル伝達機構におけるTecの機能について検討し、以下のような知見を得た。(1)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及びトロンボポエチン(TPO)依存性に増殖するヒト血液細胞株UT-7を用い、いずれのサイトカインの刺激によってもTecのチロシンリン酸化と活性化が誘導されることが示された。またBA/F3細胞を用いた検討により、Tecはサイトカインによるc-fosがん原遺伝子の転写活性化に関与することも確認された。 (2)様々な発達レベルにあるヒトBリンバ球(pre-B,pro-B,mature B)の細胞表面抗原のシグナル伝達機構を解析し、Tecキナーゼが多くのBリンパ球分化刺激伝達に関与することを確認した。またTec-familyのメンバーであるBtkの欠損症であるXLA患者末梢Bリンパ球中にTecが発現していることを確認し、TecとBtkが必ずしもその機能を補完し合うことは出来ないことを示した。 (3)酵母のtwo-hybrid法を用いTecのキナーゼドメインをbaitとして、Tec基質のスクリーニングを行った。その結果計6種類のTec会合蛋白質(Tec-imteracting protein : TIP)を同定した。
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