研究概要 |
1.イネ葉原基近傍におけるプラスチド遺伝子の発現パターンの解析 イネは、発育の全期を通じて、葉原基の分化と葉の葉鞘からの抽出との間には、時間的に密接な関係が存在する。すなわち、任意の葉が葉鞘から抽出を開始する時期には、内部の成長点近傍に葉原基を含め発生段階が異なる4つの幼葉が常に存在する。葉鞘基部の縦断切片に対するin situハイブリダイゼーションを行なうことによって、葉原基から抽出を始めた葉までの5つの葉の発生段階(P1〜P5)における遺伝子の発現パターンを同時にモニターすることができる。virescent突然変異株v1の温度シフト解析から、プラスチドの転写・翻訳系遺伝子(rpo,rpsなど)がP4と呼ばれる葉の発生ステージに特異的に発現し、核遺伝子V_1がそれら遺伝子の発現を統御していることを明らかにした。この発生ステージは葉の空間的分化が終了し、機能的分化(光合成細胞への変換や気孔の形成など)が開始する段階に対応する。人為的にV_1遺伝子の働きをそのステージで阻害させた場合、プラスチドの転写・翻訳系遺伝子の発現のタイミングがずれることによって他のプラスチド遺伝子の発現制御が不能となり、正常な葉緑体への変換が停止した。 2.rpo遺伝子の5'上流域の解析 プラスチド遺伝子発現のトランジェントアッセイ法を用いて、プラスチド局在RNAポリメラーゼ遺伝子rpoの5'上流域を解析し、転写調節に関わる領域の同定を行った。
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