研究概要 |
我々は酸化されたジアシルグリセロールがホルボールエステル類に匹敵するほどのCキナーゼ活性化能をもつことを明らかにしているが,これが細胞内で情報伝達物質であることを実証するために,ヒト好中球の活性化によるスーパーオキシドの産生を測定した.1,2-ジアシルグリセロールヒドロペルオキシドがヒト好中球をよく活性化したのに比べ,1,3-ジアシルグリセロールヒドロペルオキシドには活性化能がなかった.したがって,酸化された生体膜からホスホリパーゼCの作用により1,2-酸化ジアシルグリセロールが切り出された場合,これがCキナーゼ依存の細胞内情報伝達物質として作用することが好中球の活性化により実証された.すなわち,1,2-酸化ジアシルグリセロールは酸化ストレスが亢進した場合には,生体内発がんプロモーターとして作用しうると考えられる. ヒト発がんの主たる原因として栄養のバランス不良(35%),喫煙(30%),慢性炎症(30%)が挙げられその寄与率はカッコに示したとおりである.これらは食事由来の抗酸化剤の欠如,フリーラジカルへの暴露,活性酸素・フリーラジカルの過剰な生成と読み替えることも出来,発がんにおける活性酸素・フリーラジカルの重要性が指摘されている.活性酸素・フリーラジカルはDNAを酸化的に修飾してイニシエーションの原因となると考えられてきたが,酸化されたジアシルグリセロールを介して活性酸素・フリーラジカルがプロモーターとして作用することを示唆する点で非常に興味深い.
|