研究概要 |
放射線や化学物質によるDNA損傷がもたらす発がん過程において、p53タンパクとDNA二重鎖切断の修復をおこなうRAD51タンパクがどのように、細胞周期を停止させDNA修復するか、あるいはアポトーシスを導くかを明らかにするために、それらの相互作用を調べた。 (1)マウスRecA様遺伝子Rad51遺伝子とp53タンパクを培養細胞で発現させ、抗Rad51およびp53抗体で免疫沈降しウエスタンブロットにより、Rad51タンパクは、p53タンパクとATP,DNA結合ドメインで結合し、その結果、相同組換えに関する活性を失うことが明らかとなった。 (2)減数分裂特異的相同組み換え遺伝子Dmc1のノックアウトマウスは、減数分裂期に最も重要な父方、母方の相同染色体の対合ができず、減数分裂を停止するとともにアポトーシスを起こして、細胞周期の進行を停止した生殖細胞が排除される。精巣のタンパク抽出液をもちいて、抗Dmc1,抗p53抗体による免疫沈降したところ、互いに、Dmc1とp53が共沈することが明らかとなった。しかし、Rad51タンパクは、精巣では発現しているにもかかわらず共沈してこなかった。このような結果から、p53タンパクはRad51タンパクの活性を抑制することにより、アポトーシスを引き起こすと考えられる。また、精巣では、p53は、Dmc1タンパクに結合し、Dmc1の活性を補うか、あるいは、影響を与えない状態で減数分裂の進行を監視している。減数分裂、対合、組換えの異常があれば、p53は、Dmc1からはなれ、Rad51タンパクに結合し、アポトーシスを起こす可能性がある。
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