研究概要 |
今までの研究により我々はサイクリンキナーゼインヒビターp57^<KIP2>遺伝子がBeckwith-Wiedemann症候群の原因であることを見いだした。今回さらにBeckwith-Wiedemann症候群患者の解析を国内でさらに15例行った。コーディング領域とイントロン-エクソン境界領域のシーケンスを行った。その結果、2名の患者に変異p57^<KIP2>が見い出された。今までの変異の結果をまとめると、患者ではC末付近に位置するグルタミン、スレオニンリッチなQTドメインが常に欠失しており、タンパクとしてこの領域が重要であることが示唆された。この事を細胞レベルで証明するために患者変異株を用いて機能解析を行なった。その結果、QTドメインの変異は細胞レベルでも核へ移行できないという形で正常に機能しないことが証明された。ついで、この中で変異を伴っていた4名のBeckwith-Wiedemann症候群患者について腫瘍の発生の有無を調べたところ、発生していないことがわかった。一方、ウィルムス腫瘍を発生したBeckwith-Wiedemann症侯群患者4名についてこの遺伝子に変異がないか調べたところ、変異は見いだされなかった。さらに、孤発例のウィルムス腫瘍においてもp57^<KIP2>遺伝子が関与しているか調べた。方法はサザーンによる方法と直接コーディング領域のシークエンスを行なって変異を探し、それがどういう種類のものか調べることである。ウィルムス腫瘍の30例についてサザーン解析を行った。用いた制限酵素はBamHI,TaqI,BglIIである。1例のみTaqIでバンドの欠失を認め、他のサンプルには欠失、再編等は見いだされなかった。しかし、この1例も確実な欠失であるか確定できなかった(埼玉がんセンター、金子安比古先生との共同)。さらに、ウィルムス腫瘍を初めとし、肝芽腫、横紋筋肉腫、副腎皮質腫瘍等を含む約50例についてコーディング領域の直接シーケンスを行った。その結果、意味のある変異を見いだすことはできなかった。ところが、mRNAの発現をRT-PCRで見たところ、少数例ではあるがほとんど発現していない例が半数以上を占めていることがわかった。
|