研究概要 |
ショウジョウバエMAPキナーゼキナーゼの優性活性化型変異によって表現形の回復されるP因子挿入突然変異Gp99を同定し、これがM期の進行に必要な新規の細胞周期因子をコードすることを、これまでに明らかにしてきた。データベースの検索から、Gp99のコードするタンパク質(428アミノ酸残基)のC末側の約160残基の領域に類似した配列を共通に持つタンパク質配列を見い出し、それらが3つのサブファミリーに分類できることを見い出した。全ゲノム解析が完了または良く進展している出芽酵母や線虫には3サブファミリーに属する遺伝子がそれぞれ見い出され、サブファミリーの分岐が進化の速い段階で生じ、その後も保存されてきたことを示唆する。本研究では、出芽酵母の全4遺伝子(Sc-A,Sc-B1,Sc-B2,Sc-C)について相同組換えによる遺伝子破壊などによる機能解析を行った。その結果、Sc-A破壊株は殆ど増殖ができず、FACSによる解析からG1期で停止することが明らかになった。Sc-B1,Sc-B2は互いに類似し機能的重複も予想されたため、二重変異体を作成したが、増殖異常は認められなかった。Sc-C破壊株では、増殖の低温感受性が認められ、低温下(14℃)ではG2/M期で停止するという予備結果を得ている。なお、Sc-B1 Sc-B2二重破壊株とSc-C破壊株ではいずれも現数分裂の異常が認められた。以上のように、この遺伝子ファミリーあるいは新規の機能ドメインは、細胞の増殖制御に関わることが示唆されている。このタンパク質に結合する因子の探索や、サイクリンや他の細胞周期因子との相互作用などについての解析を進めつつある。
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