研究概要 |
白血病、悪性リンパ腫には複雑な染色体異常を持つ症例がみられる。そのような症例は予後不良が多く、複雑な異常の獲得は増悪化に関係していると考えられる。これらの症例は染色体に特異的な着色プローブと染色体の領域に特異的なプローブとを混合して詳細に染色体異常を観察したところ、染色体の一領域が別の染色体上の複数領域に移動していることがわかった。私達はこの現象をsegmental jumping translocation(SJT)と名付けた。このSJTは新しい遺伝子増幅機構である。SJTは23対のヒト染色体の複数の領域に存在すると考えられるので、複雑な染色体異常をを持つ白血病、悪性リンパ腫155症例においてSJTを持つ領域を同定し、さらに共通領域内に存在する遺伝子(群)を同定して増悪化機構を解明することを目的とした仕事を行った。 白血病・悪性リンパ腫の155症例において8,9,11番染色体の8q24,9q34,11q13などの8ケ所の染色体領域がSJTをもつことを見つけ、このうち9q34,21q22領域は二次性白血病を含む急性骨髄性白血病に、11q13領域は悪性リンパ腫に多くみられるなど疾患特異的に高頻度にみられる領域が存在した。10例についてはSKY FISH法を用いることによりSJTの転座相手を同定することができた。SJTに関与する領域は患者間で異なっており、この共通領域内に存在する遺伝子(群)がSJTにて遺伝子増幅することにより悪性化に関与すると思われる。8q24領域にSJTを持つ2例の悪性リンパ腫症例ではFISH法でみられたコピー数に比例してMYCの発現量がみられた。今後、SJT領域内に含まれ、高率に発現をしている遺伝子を単離する方法を開発する。さらにSJT領域よりマイクロディセクション法にて単離したDNA断片をプローブとしてFISH法を行い、悪性化の予知や治療効果判定に用いることを検討している。
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