研究概要 |
紫外線やX線などにより染色体DNAが損傷を受けた場合細胞の増殖が細胞周期のG1期またはG2期で一時停止される。この間に損傷したDNAは修復され変異を残したままDNAが複製されることが阻止される。1988年にFornaceらは、チャイニーズハムスター由来のCHO細胞を用いて、紫外線照射によって誘導される20個以上のcDNAをクローニングした。そのうち、gadd34,gadd45,gadd153は、紫外線以外にもDNAアルキル化剤であるmethylmethane sulfonate、電離放射線、過酸化水素によって著明に誘導されてくる。また、マウス骨髄性白血病M1細胞をIL-6で刺激した際に誘導されるMyD116はgadd34のマウスホモローグであり、MyD118はp53のターゲットであるgadd45と極めてホモロジーが高い。本研究では、MyD116/gadd34の遺伝子欠損マウスを作製しin vivoでの役割を調べるとともにMyD116/gadd34に結合する蛋白を同定し、機能的役割を解析することを目的とした。MyD116/gadd34のC末部をbaitに酵母two hybridシステムを用いてMyD116/gadd34と相互作用する分子をスクリーニングしたところprotein phosphatase type I(PPI)が得られた。MyD116/gadd34の細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導のメカニズムがなんらかの分子を脱リン酸化することにより作用している可能性が示唆された。In vivoでのMyD116/gadd34の役割を検討するためMyD116/gadd34ノックアウトマウスを作製した。MyD116/gadd34ノックアウトマウスは、正常に生まれてきた。現在、DNA障害やストレスにともなう細胞増殖阻止やアポトーシスに異常がみられないかどうか検討中である。
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