研究概要 |
(1)我々が開発した酵素的リン脂質誘導体の合成法を応用して、DPP-CNDACを大量合成する方法を確立し、活性評価用サンプル(10g)を合成した。リン脂質誘導体の化学合成は一般的には繁雑であり、また、CNDACは、2′-位で異性化しやすいために化学変換が困難であるが、我々が開発したホスフォリパーゼDの触媒するホスファチジル基転移反応を応用したホスファチジン酸エステルの合成法を用いることにより、DPP-CNDACを簡便に合成する方法を見い出すことができた。 (2)合成したDPP-CNDACの制がん活性をin vivoマウス腫瘍を用いて母化合物のDMDCと比較検討した。その結果、疑似リン脂質体に変換することで、CNDACの制がん活性が顕著に増強されることが明かとなった。例えば、皮下移植マウスM5076肉腫系で、DPP-CNDAC投与群(Day1,5,9,100mg/kg/day)は、21日後に93%の腫瘍増殖抑制率を示したが、同量(モル換算すると約1/3量に相当)CNDACを投与した群では、腫瘍増殖抑制率38%であった。また、化合物を経口投与した場合も同様にCNDACを凌ぐ強い制がん効果をDPP-CNDACが有することが明らかになった。 (3)分子設計した当初よりDPP-CNDACは、その構造からリポソーム化に好適であると推定していたが、実際極めて安定なDPP-CNDAC含有リポソームを容易に作製可能であることを確認した。さらに、DPP-CNDAC自身でリポソームを構成できることも判った。 (4)DPP-CNDAC含有の細網内皮系回避型リポソームの制がん効果を制がん活性をin vivoマウス腫瘍系を用いて検討した結果、リポソーム化することでDPP-CNDACの制がん活性が増強されることが判明した。例えば、皮下移植したマウスMethA繊維肉腫系では、DPP-CNDAC量として50/mg/kg(Day6,8,10,12,14)を投与すると、腫瘍の増殖がほぼ完全に抑制された。
|