研究概要 |
モロニ-ウイルスと相同性のあるフレンドウイルス標的ペプチドの構造と機能を解析し,以下の諸点を明らかにした. 1.Th株の標的ペプチドEnv_<462-479>(i)に特異的なTh株3種F5-5,FP10-10,FP10-13について各残基のアラニン置換体に対する活性を検定した。この結果F471A(471位のFをAに置換したもの),Y475A,R476Aに対していずれも活性を減じた。またF471AとR476AはMHCH-2D^bに対する競合阻害能も減じた。したがって,MHC結合残基は471(F)と476(R),TCRの認織エビトープの主要残基は475(Y)である。 2.Th株F5-5を用いてiペプチドの最小ペプチド長を検定したところN端5残基を除去しても活性は顕著に低下しなかったが,C端Rの除去は活性を低下させたので,最小長は13残基である。更に13残基の枠をC端側にシフトさせてみたところ,N端からC端に向けて9残基のシフトが可能であったので,Env_<471-479>(FEKSYRHKR)9残基をコア配列とする全長13残基が同定された。感染系の抗脾腫効果でみても最低13残基長が必要であった。 3.i特異的Th株3種はいずれもモロニ-ウイルスのi関連ペプチドi_mに対して活性を示さなかった。しかし,i_mのN残基をiの主要エビトープ残基Yに改変したもの(i_mY)に対しては1株が強い活性を,もう1株が極めて弱い活性を示したが,i免疫リンパ節細胞の活性は軽微であった。 4.CTL株の標的ペプチドGag_<71-79>とGag_<75-83>はGag前駆体シグナル配列に5残基重複して存在するが,高い疎水性を示すシステイン含有ペプチドであるため,MHCとの結合能が高く,CTLの活性能が極めて高い。 5.Gag前駆体シグナル配列に由来する2種のCTL標的ペプチドはいずれも単独では抗腫瘍効果も,抗脾腫効果も示さなかったが,p15Gagタンパク領域を含む組換えワクシニアウイルスが強力な抗脾腫効果を示した。p15領域より30残基のペプチドを合成してその感染防御効果を調べたところ,p15Gag_<38-67>とp15Gag_<114-143>に標的活性があった。
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