研究概要 |
HIV gp120とCD4との相関によってもたらされるCD4下流シグナルのHIV転写に及ぼす影響を、HIV感染患者末梢血に直接CD4架橋形成をもたらしその結果誘導されるHIVp24抗原を測定、あわせて同時に誘導されるTNF-αの影響も解析した。結果は64例中29例(43%)の症例でHIVの複製誘導が観察された。しかしながら抗TNF中和抗体でその複製が抑制された症例は一例もなく主としてCD4下流のシグナルにより直接その転写が誘導されていると考えられた(J.Virol.71 : 6230,1997に報告)。ついでCD4下流シグナルの実体を探査すべくタンパクのりん酸化を中心に解析を進めたところrasのカスケードが活性化される事を見出した。CD4シグナルによるTNF-α誘導を指標とした系でdominant-negative rasの発現はこれを抑制した(Blood 90 : 1588,1997に報告)。さらにCD4シグナルをT細胞レセプター刺激から独立してもたらした場合これを抑制することを観察した(Clin.Imunol.Immunopathol.85 : 195,1997に報告)。加えてCD4架橋形成によりCD4+T細胞選択的にBcl-2発現の低下を誘導しそのアポトーシス誘導を助長する事も見出した(Blood 90 : 745,1997に報告)。研究計画で提唱し現在も継続して検索を続けているのはマクロファージのCD4分子に介在してそのシグナル伝達を担う分子の同定である。現在酵母two-hybrid法によりマクロファージより得たCD4細胞質ドメイン結合性229クローンを確立し目下その内容を解析中である。
|