研究概要 |
エイズにおけるCD4T細胞消失機序にアポトーシスの関与が示唆されている。さらに解明すべきは、いかなるHIV遺伝子産物がどのような機序でアポトーシスを引き起こし、かつそれらはHIV感染個体のCD4T細胞減少にどの程度関与しているかの解明であろう。かつHIV遺伝子産物の中でとくにEnvはアポトーシス誘導に主要な役割を果たしていることが予想されている。HIV感染細胞致死のモデルと考えられるHIV-gp160発現細胞を用いて、gp160/CD4複合体によるアポトーシス誘導シグナルの全容、とくにその際のカルモジュリンの役割を明らかにしている。本年度は以下の2項目について明らかにした。 1.CaM結合部位を欠失したmutant gp160の細胞内での発現 Millerら(AIDS Res,Hum.Retroviruses7:511,1991)は合成ペプチドを用いた拮抗阻害実験でgp160C末端の約20アミノ酸残基にCaM結合部位があることを示している。申請者らはgp160の821、855、862番目以降を欠失させたmgp160を発現する、UE160△821、UE160△855、UE160△862を作製し、これらを用いてgp160がCaMに結合することが細胞内Ca^<2+>上昇に必須であるかを確認した。かつgp160C末端の5アミノ酸残基がCaM結合に必須であることを明らかにした。 2.gp160結合CaMの補酵素活性の測定 CaM依存性酵素PDE(phosphodiesterase)を用いたassay系によりgp160に結合したCaMは活性型になることを明らかにした。HIV感染個体CD4T細胞消失におけるアポトーシスの役割については内外で多くの研究がなされているが未だに確かな結論は得られていない。本研究はその中でもEnvの役割に焦点を当てて検討を進めた結果、CaMを介したHIV-envによるアポトーシス誘導の新しいpath wayを明らかにした。
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