研究概要 |
長期間にわたって、末梢T細胞分化を維持する系を確立するには、骨髄細胞による造血系幹細胞の供給が必須である。これまでSCIDマウスへの、ヒト骨髄細胞の移植は部分的な成功にとどまっていた。我々はSCIDマウスの皮下に、ヒト成人海綿骨を移植した。ヒト骨髄の組織像は、移植後8-12週でも正常に保たれていた。重要な点はマウスの骨髄に、ヒト由来のGM-CSF,BFU-E,CFU-E活性が確認されたことである。マウスの脾臓にもヒトCD45+,CD19+,CD69+細胞の定着がみられた。我々の結果は、ヒト骨髄細胞のマウスでの再構築実験において、最も成功した例である。この成功の原因は、海綿骨組織がヒト造血系細胞の分化、維持に必要な微少環境を提供することによるものと我々は解釈している。この系はHIVだけでなく、遺伝子治療の前臨床モデルとしても発展できる可能性がある。遺伝子治療のモデル実験として、我々はヒト骨髄からストローマ培養をつくり、それにヒトIL-6遺伝子を持つレトロウイルスベクターを感染させ、予めSCIDマウスへ移植しておいたヒト正常骨に注入した。6週後の検索では、IL-6によるヒト破骨細胞の分化・増殖が観察された。 さらにHIV感染モデル確立のため、ヒト胎児(妊娠18週)の骨髄と胸腺をNOD-SCIDマウス皮下に移植した。移植後、8週の検索ではヒトCD45+,CD4+細胞が、移植された骨髄と胸腺に広範囲にわたり認められただけでなく、マウス脾臓への定着も観察された。
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