研究概要 |
本年度は脳で発現しているホスホリパーゼDのクローニングを行った.酵母,ヒマPLDやヒトPLD1のコンセンサス配列を用いてPCRを行いラット脳,肝臓から計3種のPLDをクローニングし,配列を決定したのち分裂酵母で発現させPLD活性を有することを検証した.一つはヒトで報告されているhPLD1と同じものであったのでrPLD1aと命名した.他の一つはそのスプライスバリアントで38アミノ酸を欠損するものであったのでrPLD1bと命名した.3番目の脳からクローニングされたものは新規の酵素で,PLD1が低分子Gタンパク質,PIP_2にのみ依存したのででrPLD2と命名した.以上により,ホスホリパーゼDはPLD1,PLD2,およびその存在がよく知られている脂肪酸依存性PLDに大別されることが明らかになった.RT-PCRによりPLDの組織分布を調べたところ,脳に存在するPLD1はb型が主で、a型はほとんど検出されないことが判明した.PLD2は脳に強く発現していた.また脂肪酸依存性酵素を精製する過程で酵素を強く阻害する因子が存在することを見出したので精製,同定を行い,それらがリゾホスファチジルセリン,ホスファチジルイノシトール,リゾホスファチジルイノシトールであることを明らかにした.これらのリン脂質は脳に存在するすべてのタイプのPLDをきわめて低濃度で阻害した.
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