研究課題/領域番号 |
09259219
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
根岸 学 京都大学, 薬学研究科, 教授 (60201696)
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研究分担者 |
市川 厚 京都大学, 薬学研究科, 教授 (10025695)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1997年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | プロスタグランジンE2 / 神経細胞 / 神経突起 / G蛋白質 / Rho / Rhoキナーゼ |
研究概要 |
プロスタグランジンE2は中枢神経系でさまざまな神経活動に関与している。我々は、神経細胞の形態におけるPGE受容体の1つのサブタイプであるEP3受容体の機能を調べるため、NGFで分化させたPC12細胞においてEP3受容体が低分子量G蛋白質のRhoを介して神経突起の退縮と成長円錐の消失を引き起こすことを見いだした。また、Rhoの常時活性化体であるRho-V14をPC12細胞にマイクロインジェクションすると神経突起の退縮が引き起こされ、Rhoの活性化により退縮が起こることがわかった。この作用の分子機作を明らかにする目的でRhoのターゲット分子の同定を行った。Rhoのターゲット分子にはプロテインキナーゼN、Rhoキナーゼ、シトロン、ロ-フィリンなど多数の蛋白質が見いだされている。これらの中で、Rhoキナーゼはアクトミオシン系の収縮によりストレスファイバーや接着斑の形成に関与することが示された。神経突起の退縮もアクトミオシン系が重要な役割をしていることが示唆されているので、この退縮作用にRhoキナーゼが関与するか調べた。RhoキナーゼはN末からキナーゼドメイン、コイルドコイルドメイン、Rho結合ドメイン、Rhoドメインからなり、キナーゼドメインのみで常時活性型になる。そこで、キナーゼドメインのみを作成し、PC12細胞にマイクロインジェクションするとそれ自体で神経突超の退縮が引き起こされた。一方、キナーゼドメインのATP結合部位を潰した変異体は全く活性を示さなかったので、キナーゼ活性そのものが退縮に必要であることがわかった。更に、Rho結合ドメインやPHドメインを作成し、マイクロインジェクションするとEP3受容体による突起の退縮を完全に抑制した。Rhoのエフェクター領域に変異を入れたRho-V14,A37はRhoキナーゼに結合することができず、また突起の退縮も引き起こさなかった。これらの結果から、EP3受容体はRhoを介してRhoキナーゼを活性化し、神経突起の退縮を引き起こすことがわかった。このように、EP3受容体はGiを介したアデニル酸シクラーゼの抑制による作用に加えて、Rho活性化経路という全く新しい情報伝達経路にリンクし、神経細胞の形態の調節を行い、神経の可塑性に関与する可能性が示唆された。
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