研究課題/領域番号 |
09260208
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桜井 正樹 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (30162340)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1997年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 海馬 / シナプス可塑性 / 長期増強 / 長期抑圧 / カルシウム / NMDA受容体 |
研究概要 |
海馬CA1領域における長期増強(LTP)と長期抑圧(LTD)は逆方向の変化でありながら、いずれもNMDA受容体依存性で、Caの細胞内流入が必須である。これを説明するため、LTPでは高度のCa流入でkinase系が、LTDでは中等度のCa流入でphosphatase系が優位となって逆方向の変化がもたらされるとする仮説が提出されている。しかし、この仮説では、LTPは高頻度短時間刺激で誘発できるが、LTDは低頻度長時間刺激(1Hz、10分間)を必要とすることが説明できない。本研究では、Mg-free溶液中で、NMDA受容体チャネルを介するCa流入が脱分極を必要とせずに生ずるパラダイムを用いてこの問題と取り組んだ。15-24日令のラットCA1海馬スライスを用い、放線状層を刺激し、シナプス応答を細胞外記録した。一部の実験では、錐体細胞体からwhole cell記録を行った。Mg-free液を10分間潅流すると、-70mVに電位固定した状態で、CNQX(AMPA型受容体の阻害)抵抗性で、AP-5(NMDA受容体阻害剤)感受性のシナプス電流が認められ、この条件下では、脱分極がなくとも、NMDA電流、即ち、Ca流入が生ずることが確認された。 このため、Mg-free液中では1Hz数十回の刺激でLTPが生じる。条件刺激の回数を減らすと、次第にLTPの大きさは減少し、その閾値は、1-2回前後にある。刺激なしとLTPが出現する領域の間にLTDを生じさせる軽度のCa流入を生ずる領域があることが期待されるが、そのような領域は観察されなかった。一回の刺激で流入するCa量を更に微細に減少させるため、条件刺激時にCNQXを加え、脱分極を部分的に押さえ、Ca流入を減少させたが、一回刺激ではLTPもLTDも起こらなかった。更にCa流入を下げるため、条件刺激時の潅流液に2、5、10μMという少量のAP-5を加え、NMDA受容体を部分ブロックしたが、LTDは起きなかった。一方、この、部分ブロックの状態でも、600回刺激を用いると、はっきりしたLTDが認められた。CNQX存在下で、2μM AP-5による部分ブロックの条件下、60回刺激でもLTDは認められなかった、200回刺激では、はっきりしたLTDが出現した。このことから、LTDの生起には、少量-中等量のCa流入が一回ではなくかなりの多数回あるいはCa濃度上昇が一過性ではなくかなり長時間起こることが必要であることが示唆される。
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