研究課題/領域番号 |
09261202
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
濡木 理 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10272460)
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研究分担者 |
武藤 裕 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (30192769)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1997年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | トランスファーRNA / アミノアシルtRNA合成酵素 / 蛋白質合成 / 校正反応 / RNAスプライシング / RNA認識機構 / X線結晶構造解析 / NMR |
研究概要 |
イソロイシルtRNA合成酵素のX線結晶構造解析 生体内における遺伝情報変換の過程では、校正反応により高精度の変換が維持されている。遺伝暗号翻訳の過程では、例えばイソロイシルtRNA合成酵素(IleRS)は、L-バリンを誤認識しVal-AMP、Val-tRNAIleを合成するが、一方でtRNAIleの結合に依存して、これらの誤産物を加水分解することによって、アミノアシル化反応の誤りを校正する。実際に、熱力学的にはvan der Waals相互作用によるL-イソロイシンとL-バリンの識別因子は1/4程度であるにもかかわらず、IleRSの持つ校正反応によってin vivoでのイソロイシンのコドンがバリンに読まれる割合は、1/3000程度まで抑えられている。1970年代から、IleRSは第1のsieveでL-イソロイシン以下の大きさのアミノ酸を認識してアミノアシル化を行い、第2のsieveでL-バリン以下のアミノ酸を認識し加水分解することによりL-イソロイシンのみをアミノアシル化するという“double sieve model"が提唱されてきたが、その構造的な実体は全く明らかになっていなかった。我々は、高度好熱菌IleRSとL-イソロイシンおよびL-バリンの複合体の結晶構造を2.5A分解能で解明した。その結果、第1のsieveはRossmann fold domain上に存在し、イソロイシンおよびバリンを同様に認識していたのに対し、第2のsieveはRossmann fold domainから突出した校正ドメイン(βバレル構造)上に存在し、バリンを選択的に認識していた。この校正ドメインを欠くIleRS変異体を作成したところ、校正反応活性を完全に喪失し、L-バリンとL-イソロイシンをほぼ同じ効率でアミノアシル化することが明らかになった。さらにこのL-バリン特異的ポケットの近くには、全ての生物種のIleRSで保存されているThr230,His319,Asn237が近接して存在し、加水分解酵素で見られるcatalytic triadを形成していた。大腸菌のIleRSにおいてThr230とAsn237に対応する残基をAlaに置換した変異体を調製したところ、校正反応が完全に失活した。さらに我々は、エネルギー計算を行うことによりIleRSとtRNAIleのドッキングモデルを作成したところ、校正ドメインが180度回転してtRNAのDループと結合し定位されることにより、catalytic triadがアミノアシル化活性部位に接近し、アミノ酸の校正を行うことが示唆できた。この校正ドメインのトポロジーは、HIVやRSVのカルボキシペプチダーゼに良く似ており、進化の過程でイソロイシンとバリンを識別する必要が生じた際に、IleRSの触媒ドメインに取り込まれたとも考えられる。 ショジョウバエSxl蛋白質とターゲットRNAの複合体のX線結晶構造解析 ショジョウバエの性決定に働くRNAスプライシング調節因子であるSxl蛋白質とtra pre-mRNAの認識配列(17mer)の複合体の結晶構造を、重原子同型置換法により2.7Å分解能で解明した。その結果、2つのRNP domainは逆平行βシート面を向かい合わせターゲットRNAをサンドウィッチする恰好でこれを認識し、ウリジンに富む配列の3'側をdomain 1が5'側をdomain2が認識するという、新規のRNA認識機構を明らかにした。これは、2つのタンデムに並ぶRNPドメインが特異的な二次構造を作らないRNAを認識する機構を明らかにした最初の例である。
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