研究概要 |
従来、ファージライブラリーのスクリーニングはイオン強度約0.2の緩衝液を用いて行われていたが、我々は塩橋を強調するためにイオン強度約0.01の緩衝液を用いた。牛膵臓RNase Aに結合するペプチドを7残基の直鎖状ランダムペプチドを提示するライブラリーから5ラウンドのbiopanningによってスクリーニングした。その結果、従来の緩衝液では得ることができなかった、RNase Aに親和性を持つファージクローンが得られた。ファージの提示するアミノ酸配列はLDNLWMV、SPWDARL、SADKWHT、EISMHYR、STASYTR、ISFDYLI、DSHTPQR、GRPAWDAなどで、このうちLDNLWMV、SPWDARLを合成し、蛍光偏光解消法でRNase Aに対する親和定数を求めたところそれぞれ3×10^3及び5×10^3M^<-1>であった。また、少なくともLDNLWMVはRNase A(13.7k,pl=9.6)と同程度の分子量の塩基性蛋白質であるegg white lysozyme(14.3k,pl=11)には結合せず、非特異的な塩橋による結合ではないことが確認できた。得られたアミノ酸配列には、何れも荷電アミノ酸が含まれており、その両端には疎水性アミノ酸が存在する傾向が見られた。今後、得られたペプチドの特異性、イオン強度依存性を解析すると共に、更に条件を変えてスクリーニングし、統計的解析を行う。
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