研究概要 |
蛋白質の立体構造形成および四次構造形成のメカニズムを解明するために、大腸菌トリプトファン合成酵素αおよびβサブユニットのX線結晶構造解析を行った。 αサブユニットの立体構造は、αβ複合体のものとほぼ同じであった。しかし、αサブユニットの表面電荷は、本来のαβ複合体のものとは異なり、また複合体のαサブユニットだけの場合とも一部異なる部分が存在した。これは複合体を形成することにより、分子表面の電荷分布が変化することを示している。立体構造的には主鎖および側鎖に大きな差異は見られなかったが、主鎖の揺らぎを示す温度起因では差が見られた。αサブユニット二重体では全体に温度因子が高いが、その中でも側鎖番号に沿って周期的に温度因子の高い領域が存在する。これらの部位はαサブユニットのTIMバレル構造の周期的に繰り返すα/βターンの部分である。このうち3カ所は、複合体形成時にβサブユニットを包み込むような配置となり、複合体での温度因子は極めて低い。すなわち大きな揺らぎはないと考えられる。一方、αサブユニット二重体ではこの部位を固定する相手を持たないため揺らぎが大きくなり、温度因子が高くなるものと考えられた。これらの潜在的な構造変化が酵素活性に大きく寄与しているものと考えられる。 またαサブユニットの複合体形成時の相手方、つまりβサブユニット単独での構造解析を行うため培養・精製・結晶化を行った。野性型βサブユニット発現系をもつ大腸菌を培養し、最終精製にMonoQカラムを行い、蛋白濃度2%にて結晶化を行った。結晶化は0.2MCaCl2,HEPES-buffer pH7.5,5.28%PEG400の条件を中心に行った。その結果、約0.2x0.1x0.002mmの菱形板状結晶を得ることができた。結晶は複数枚張り付いたような結晶集合体であり、これを引き離し回折実験を行ったが、結晶が非常に小さいためか、回折反射は得られなかった。現在さらに良質の結晶が得られるように、大量精度を準備し、各種結晶化条件の検索を行っているところである。
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