研究概要 |
Brassica属植物の自家不和合性因子のひとつであるSRKについて,大腸菌を利用してキナーゼドメイン(KD)のみを含む領域の単独発現を検討した。可溶性のGST融合型組換えタンパク質(GST-KD)は大量発現され高度に精製でき,自己リン酸化能を有することが判明した。各種キナーゼ阻害剤の効果を検討した結果,プロテインキナーゼCの阻害剤GF-109203Xによる阻害が顕著であった。次に,キナーゼの基質となる標的タンパク質の同定を目的として,GST-KDを柱頭抽出物とインキュベートさせ,柱頭抽出物中のタンパク質に含まれるキナーゼ結合タンパク質を結合させ,バッファーによる洗浄後,^<32>P-ATP存在下でリン酸化反応をさせた。SRK以外に,分子量42,38,26,23,20,および16kDaのリン酸化タンパク質(p42,p38,p26,p23,p20,p16)が検出され,SRK結合性タンパク質候補と考えられた。 さらに,これらのSRK結合性タンパク質と既知の各種キナーゼ標品を用いてin vitroでのリン酸化反応を検討した。サイクリックAMP依存プロテインキナーゼはGST-KD,p38を,MAPキナーゼはGST-KD,p42,p38を,cdc-2はp42をリン酸化することが判明し,柱頭抽出物中にはSRKのキナーゼドメインと複合体を形成し,各種キナーゼの基質となりうるタンパク質が含まれ,花粉因子とSLG/SRKの相互作用による情報伝達に関与する可能性が示唆された。現在は,これらの基質タンパク質のcDNAをクローニングするために,柱頭特異的なmRNAを抽出し,cDNAライブラリーを作製している。
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