研究概要 |
高等動物染色体の核内配置において、セントロメアおよびテロメアが重要な役割をはたすことは明らかであるが、複製タイミングのスイッチ点であるバンド境界も重要なランドマークをなす部位と想定して研究を進めてきた。ヒトMHC領域内に、複製タイミングのスイッチ点としてバンド境界を正確に特定でき、SARの存在および特徴配列類を見いだした(Tenzen et al.,1997)。特徴配列の一つは、大型のポリプリン/ポリピリミジン配列であり、三重鎖を形成することが明らかになった。偽常染色体境界の近傍にも同様なポリプリン/ポリピリミジン配列が存在していた。三重鎖ならびにこの形成に伴って生じる単鎖は、生理条件下で他のDNA配列やRNAと配列特異的な対合を起こすことが可能であり、核内配置を決める分子機構として重要と考えられている。上記のポリプリン/ポロピリミジン配列、ならびに三重鎖形成能を持つtriやtetraヌクレオチドの反復配列、ならびに(CTG)n等の他のnon-B型構造を形成する反復配列(Sugaya et al.,1997)を蛍光プローブとして、ヒトの培養生細胞への導入実験と、未変性間期核に対するin situ結合実験を行ったところ、配列特異的に特徴的なfoci状の結合像が得られた。間期核内でのセントロメア部位との相対配置を解析したところ、プローブの配列に依存して、異なったセントロメアの近傍部位に結合していることが判明した。間期核内において、各染色体のセントロメア占有域の近傍には三重鎖を含むnon-B型構造DNAに高親和性を示す超分子構造体が存在しており、染色体上で離れた位置にあるDNA間での特異的な結合を起こさせることで、DNAの核内配置を決める機構を担っているとのモデルを発表した(Ohno et al.,submitted)。
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