研究概要 |
分裂酵母のmes1遺伝子は減数第二分裂に必須で11kDaの蛋白質をコードしている。mes1のmRNAは1個の短いイントロンを持ち、そのスプライシングは減数分裂に依存して起こる。このような減数分裂特異的なスプライシングに必須のmRNA分子上の塩基配列(シス因子)を決定する。さらに、栄養細胞に存在するスプライシング阻害因子と減数分裂細胞で発現する促進因子の同定を目標とする。 1)シス因子については、(1)コンセンサス配列と異なるスプライス部位の配列は減数分裂依存性に無関係であること、(2)イントロン内部配列に減数分裂依存的なスプライシングを決める配列があること、(3)3'エクソンにはシス因子が存在しないことを明らかにした。 2)mes1のスプライシングが起こらない突然変異株の遺伝解析から4個の遺伝子(msd1,msd2,msd3,msd4)を決定した。これらの遺伝子の変異株は体細胞分裂は正常であった。またその表現型から、msd2は減数第一分裂に、msd1は減数第二分裂に必須の機能を持つこと、両遺伝子の発現が転写因子Mei4に依存する可能性が高いことなどが明らかになった。多コピーでmsd変異を抑制するクローンを分裂酵母ゲノムライブラリーから単離し、現在解析を進めている。つぎに、mes1のスプライシングを抑制する因子を解明するため、栄養細胞においてもmes1のスプライニングが起こる変異株を探索し、12株を単離した。遺伝解析から少なくとも1個の遺伝子が同定でき、mmc1と名づけた。msc1変異株は増殖が遅く、細胞形態の異常を示した。栄養細胞においてはmsc1遺伝子産物がmes1のmRNA上のシス因子と結合し、スプライシングを阻害しているが、減数分裂に入るとmsd1、msd2遺伝子産物が発現し、msc1遺伝子産物を抑制することによりスプライシングが始まるというモデルを考えている。
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