研究概要 |
完全変態昆虫の行動は変態によって劇的に変化する。この行動の変化は変態中の神経回路網のの再編成によって起こることが明らかになっている。これらの変化は、変態中のエクジステロン濃度の変化によって調節されている。神経回路再編成の分子機構を明らかにするために本研究でではショウジョウバエとカイコを用いて2つのアプローチを行った。 1)カイコ胚cDNAライブラリーからカイコNotch遺伝子の一部867bpのクローニングし塩基配列を決めた。この部位はNotch のcdc10/ankyrin repeatsの部分で、約30個のアミノ酸からなる配列の6回の繰り返し構造よりなっていた。 2)ショウジョウバエの胚発生において神経系の発生に働く遺伝子13個の内、転写因子9個(ftz,runt,Pros,dPOU19,gsb,gsb-n,eve,cut,svp)およびシグナル伝達系のNotch遺伝子が変態中の中枢神経系で発現することをin situハイブリダイゼーションで明らかにした。遺伝子発現パターンには2とうりの変化があり、ftzとNotchは幼虫時には発現せず、直後から蛹期を通じて発現し成虫では発現しなかった。runt,Pros,dPOU19,gsb,gsb-n,eve,cutは幼虫期から蛹期を通じて発現し、成虫では発現しなかった。また、P(RK20-lacZ)ハエを用いると視葉の一部の神経細胞を変態を通じて同定できることが明らかになった。LPC(lobula platecell)は3令幼虫では神経突起を未熟な視葉に伸ばしているが、神経突起を変態開始とともに展開し、ついには変態中のlobula plateの全域を被い成虫の神経細胞となった。
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