研究概要 |
バキュロウイルスは、それぞれ150程度の遺伝子を保持しているが、機能が推定できない遺伝子も多く、これらのうち宿主をコントロールするような遺伝子の解明を行う。昆虫はウイルスの増殖を阻止するため、細胞が自殺をし(アポトーシス)個体を守ることもある。そこで、種々の生物のICEプロテアーゼファミリーで誘導されるアポトーシスを阻止するバキュロウイルスのp35に関して、AcNPVとカイコNPV(BmNPV)を比較したところ,活性に最も重要と思われるプロテアーゼで切断される領域とC末端近くの領域のみがかなり異なっていることが明らかになった。そこで、BmNPVとAcNPVのp35遺伝子のキメラを作成し脊椎動物由来の細胞でICE(caspase-1)によって誘導されたアポトーシス阻害活性を調べたところ,活性に最も重要と思われるプロテアーゼで切断される領域がAcNPV由来であるp35のみがアポトーシスを強く阻止した。これらの結果より、それぞれの宿主-ウイルス系に適したアポトーシスが引き起こされることがバキュロウイルスの増殖や宿主域の決定に重要であることが示された。一方、Xestia c-nigrumという昆虫に感染する顆粒病ウイルスのゲノムの構造解析の結果、p35とは異なるiapと呼ばれるアポトーシスを阻止する遺伝子とホモロジーのある遺伝子を同定した。この遺伝子の機能をp35欠損AcNPVを用いて調べたところ、アポトシースの阻止効果はそれほど高くないことが明らかになった。
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