研究概要 |
本年度は以下の3つの方向から研究を進めた。(a)分裂酵母のRFC3:生育に必須なrfc3^+遺伝子を見つけ、その温度感受性変異株を樹立した。そのうちrfc3-1はUV,MMS,HUに感受性で、制限温度でFACS異常を示し、DAPI染色では核分配が異常な細胞が多かった。これらの結果はRfc3がS/Mチェックポイントに関わっていることを示唆する。この変異株のRfc3では機能発現に重要だと考えられているDomain VIIIのアミノ酸がArgからTrpに点変異していた。(b)出芽酵母のNik1,Gin4:(1)CDC6,ORC,MCM変異株群とNIK1二重破壊株を作製し、それらがいずれも明らかな制限温度の低下を生じることを見いだした。NIK1がHU,UV,MMSなどに感受性を示すことからNik1がDNA複製開始とS/Mチェックポイント制御に関わっていると推測した。(2)出芽酵母にはGIN4と呼ばれる構造上NIK1と類似な遺伝子がある。gin4遺伝子破壊株は致死ではなく、FACS解析では細胞周期に顕著な影響はみられないものの細胞形態に異常を示す細胞が観察された。GFP-Gin4はbud-neckに局在し、Gin4を大量発現させると弱い生育阻害を起こし、細胞の形態がおかしくなった。cdc28変異株とGIN4との二重破壊株が異常に伸長した形態を示したことからGIN4もNIK1同様にDNA複製と細胞質分裂の連動を調節していると結論した。(c)ヒトのMCM:ヒト細胞においてDNA複製開始の制御因子として我々はMcm蛋白質に注目し、HsMCM遺伝子をクローニングしてきた。6種類のHsMCM遺伝子を揃え、抗体も準備してHsMcm2-7複合体全体の機能、構造などを解析した。
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