研究概要 |
原発性高蓚酸尿症1型(PH1)症例に検出された変異セリン:ピルビン酸トランスアミナーゼ(SPT)のエネルギー依存性分解の研究と平行して,脱ユビキチン酵素のクローニングを開始した。脱ユビキチン酵素はユビキチン化された蛋白質の分解過程でユビキチンの遊離のみならず他の役割も持つと推定され,酵母などでは多種類報告されている。動物でも機能の異なる種々の脱ユビキチン酵素が存在するという想定の下に,大腸菌体内でユビキチンとArg-β-Galの融合蛋白質を切断する活性を指標としてヒト脳のcDNAライブラリーからの新規脱ユビキチン酵素のクローニングを試み,且つデータベースから見い出された新規脱ユビキチン酵素と推定される遺伝子の産物の解析を行っている。この酵素は脱ユビキチン酵素のうちUBPファミリーに属するが,活性中心を構成すると考えられるヒスチジンを含む領域(His box)が既知のUBPの3倍以上の大きさを持つというユニークな構造をしている。検討の結果,大腸菌体内でユビキチンとArg-β-Galの融合蛋白質をユビキチンのC末端で切断する活性をもつことが明らかになったので,仮にnUBPと名付け,現在は組織分布と遺伝子座を調べている。変異SPTのエネルギー依存性分解に関しては,ウサギ網状赤血球溶血液系での解析を続行し,26Sプロテアソームとは異なるプロテアーゼの関与を示唆するデータ,変異SPTの消失が凝集等のよる除去ではなく確かに分解であることを示唆するデータは蓄積したが,問題のプロテアーゼ系を実体として捉えることは依然として困難であった。この分解に関与する酵母の遺伝子のスクリーニングもβ-GalあるいはURA3遺伝子産物との融合蛋白質の分解を指標とする限り正常SRTも不安定になるということで困難であった。変異SPTの分解には新しい視点も加え長期戦覚悟で引き続き取り組むことにしている。
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