研究課題/領域番号 |
09267245
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
西道 隆臣 理化学研究所, 神経蛋白制御研究チーム, チームリーダー(研究職) (80205690)
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研究分担者 |
横田 正幸 兵庫医科大学, 医学部, 助教授 (40148648)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1997年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | カルパイン / カルパスタチン / 脳虚血 / 神経細胞死 |
研究概要 |
カルパスタチンは、カルパインを特異的に阻害する細胞内蛋白質である。カルシウム存在下におけるカルパインに対するアフィニティーは非常に高く、事実上stoichiometricな阻害物質である。したがって、虚血後のカルパイン活性化に対しても制御的に作用することは容易に予測される。また、培養細胞において刺激にカルパスタチンレベルの変動が見られること、また、カルパスタチン自身がカルパインの選択的基質となりうることから、組織レベルでも虚血によって何らかの変化が生じる可能性が高い。しかしながら、脳虚血におけるカルパスタチンの動態に関する検討は全く行われていなかった。その理由の一つは、カルパスタチンは一次構造上の種差が大きく、ヒトカルパスタチンに対する抗体が齧歯類由来のものには反応しないことであろう。そこで、ラットカルパスタチン特異的抗体を調製し、スナネズミ前脳短期虚血の系で検討したところ、いくつかの新知見が得られた。まず、虚血後の早い時期(〜4時間後)に、おもに錐体細胞において一過的にカルパスタチンレベルが上昇する。これは、虚血に対する防御的応答である可能性が考えられる。しかし、24時間後、さらに、7日後と時間を経るにしたがって、カルパスタチンのレベルは減少する。ウエスタンブロットで、低分子量の断片が確認されたことから、恐らくカルパインによって分解を受けたものと考えられる。ここで特徴的なことは、CA1に隣接していながら、虚血に対する耐性が比較的強いCA2の錐体細胞では、カルパスタチンのレベルが高いまま維持されることである。これらのことは、カルパスタチンがカルパイン活性の抑制を通して、神経細胞を虚血障害から防御する機能を有することを示唆する。脳虚血後にストレス応答としてHSP7・HSC70 APP等のレベルが上昇することが知られており、これらが虚血耐性誘導現象に関与する可能性が指摘されている。この意味で、カルパスタチンも広義のストレス応答蛋白として位置づけるべきであるかも知れない。また、カルパスタチンが分解されることは、カルパスタチンが組織内でもカルパインの基質となりうることのみならず、脳虚血によってカルパインが生理的な範囲を超えて過剰に活性化され、細胞内における制御系が破綻したことを示すとも解釈できる。
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