研究概要 |
協調的ニューロン集団により随時形成される機能的回路,つまりセルアセンブリ(cell assembly)の活動が,記憶情報処理の基本コードである可能性を示してきた。今回は,刺激の属性の一つとしての時間情報(時間属性)を覚え処理する際にも,セルアセンブリによるコーディングが行われているのか否か,検討を試みた。 記憶課題は2種類である。まず刺激の物理的属性の違いを覚え処理する課題として,刺激弁別課題を設定した。各試行では3秒間のA,1秒間のA,3秒間のB,1秒間のB,のいずれかを弁別刺激として提示し,Aに対するGo(パネル押し)を正反応とした。次に,刺激の時間属性である刺激提示時間を覚え処理する課題として,提示時間弁別課題を設定した。用いた弁別刺激は刺激弁別課題と全く同じであるが,AかBかに関わらず,3秒間の刺激に対するGoのみを正反応とした。これら2の課題を同じラットが遂行している際の複数ニューロン活動を,主に海馬CA1とCA3から記録した。 まず個々のニューロンについては,現在までの解析の結果,刺激弁別課題にのみ関わるニューロンが一番多く,両課線に共通して関わるニューロンが,刺激弁別課題にのみ関わるニューロンの約半分あり,提示時間弁別課題にのみ関わるニューロンは見つかっていない。これらの結果は,提示時間のみをコードするニューロンはほとんどないことを示唆している。今後は,課題を遂行している際の複数ニューロン間の活動相関,つまり機能的シナプス結合の変化についても,相互相関法(cross-crrelation)等により解析する予定である。 また,サルを用いた提示時間の短期記憶課題の訓練も開始した。同時に,より多くのニューロンを安定して同時記録し解析するため,特殊電極と電極ポジショニングシステムを応用した新たな記録解析システムも構築中である。
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