研究課題/領域番号 |
09268243
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | (財)東京都神経科学総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 洋一郎 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経生化学研究部門, 参事研究員 (30073084)
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研究分担者 |
川原 正博 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経生化学研究部門, 主事研究員 (40224828)
小林 和夫 (財)東京都神経科学総合研究所, 神経生化学研究部門, 主事研究員 (80100139)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1997年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | LTP / 培養神経細胞 / 細胞内カルシウム / アデノシン |
研究概要 |
Ca^<2+>感受性色素を用い、同一視野内での培養ニューロン回路中のニューロンの細胞内Ca^<2+>レベルの変化の時空間パターンを解析した。自発的バースト発火のsynchronous oscillationがみられるニューロン回路網が出来上がるのは培養開始後約1週間であるが、培養を続けると、回路網中の一部(例えば約50%)のニューロンだけがこの細胞内Ca^<2+>レベルのtrangentな上昇のsynchronous oscillationを示す状態が得られる。さらに外部からのbiーpolarな電極刺激により自発的Ca^<2+>上昇を示すニューロンの空間パターンが変化した。一方、1Hzの低頻度刺激を数百回繰り返すと既に形成されていたLTPがキャンセルされること(depotentiation)この低頻度刺激の後LTP形成が数十分にわたって抑制されること(long-term supression of LTP)が観察されている。LTPを含めたこれらの可塑性については、刺激でシナプス間隙に多量に放出されるLTPの分解産物であるアデノシンの濃度が密接に関係しており、A1レセプター、A2レセプターの役割が証明されている。さらに高頻度刺激でシナプス間隙に放出されたATPを情報として細胞外蛋白ドメインのリン酸化が起こり、これをpotein kinaseの阻害剤で阻害するとLTPの形成が抑えられることなど、シナプス可塑性に関与する分子群のシナプス間隙での刺激頻度に伴うミクロな時空間パターンの変化が、Ca^<2+>流入など既知のシステムの他に存在することもわかった。刺激頻度依存性の遺伝子発現を含めて多くの分子マーカーを用いての、異なった時間経過を持つ分子カスケードの識別を含めて 培養下で形成された神経回路網を用い総合的なネットワーク・レベル、シナプス・レベルでの可塑性の分子レベルまで含めた解析を行いつつある。 脳内ニューロン回路網での情報処理を、興奮に伴うさまざまな分子群のニューロン・シナプスレベルでの変化の時空間パターンを明らかにすることにより、記憶をはじめとする脳高次機能の理解を目指している。全体に相互につながり合い、系としては巨大すぎ出入力関係も“超複雑な"実際の脳内のcell assemblyより、はるかに単純で操作性の高い上に、シナプス結合まで可視化できれば、dynamic cell assembly仮説の検証など理論的アプローチとの共同実験が可能であるため、良いモデル実験系となり、脳内の情報表現の基本に迫る可能性がある。
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