我々はこれまでに、マラリア感染にともなって血中のビタミンE量が低下するという事実から、「マラリア感染→ビタミンE輸送蛋白質レベルの低下→血中ビタミンEレベルの低下→マラリア耐性の獲得」といった一種の生体防御系が存在するのではないかと考えている。そこで、ビタミンE欠乏状態におけるマラリア感染についての検討を加えた。 通常食およびビタミンE欠乏食で飼育したマウスにPlasmodium yoeliiを接種したところ、通常食では原虫の接種後7日目にほぼ8割以上の虫血率であったのに対し、ビタミンE欠乏食で飼育した群については全く感染が認められなかった。 なお、この時の血中ビタミンE値は通常値の約20分の1に低下していた。以上、血中ビタミンEレベルの低下がマラリア感染に対して防御的に作用すると解釈される結果が得られた。今後はビタミンE欠乏食で飼育したことによってなぜマラリア耐性になったのか、その機構を物質レベルで明らかにしていきたいと考えている。このようなユニークなアプローチから、マラリアを克服するための新たなストラテージが生まれてくることを期待している。
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