我々は、伴性劣性高IgM症候群(XHIM)の責任遺伝子がCD40リガンドであることを見出したが、その後の多数例の遺伝子変異の検討で、XHIMの中で軽症が存在することを見出し、軽症である理由をCD40リガンドの立体構造から解析し、CD40リガンドの遺伝子変異と臨床像との相関を明らかにした。また免疫不全症であるClassII欠損症ではCD40リガンドの発現が低下していること、それが低ガンマグロブリン血症の原因となっていることを示した。CD40の刺激が入らないことによる高IgM症候群が存在し、増殖、クラススイッチが起きないことも明らかにした。 次に、Wiskott-Aldrich症候群(WAS)の責任遺伝子であるWASPの検討を行った。まず、国内14症例のWASP遺伝子変異を検索し多彩な変異を見出したが、血小板減少のみを症状とするWASの軽症型X-linked thrombocytopenia (XLT)ではmissense mutationであり、WASPタンパクの発現もほぼ正常であった。次にCOS細胞にWASPを過剰発現させる系を用いWASPがアクチン重合脱重合に関与する蛋白であることを示した。また、WASPがGrb2と結合し、WASP自体もチロシンリン酸化することを見出した。以上WASPはシグナル伝達と細胞骨格調節に関わる分子であることを示した。さらに、WAS患者では巨核球コロニー形成とproplatelets形成能が低下し、WASPの異常が巨核球分化過程にも障害をもたらすことを示した。
|