研究概要 |
本研究は、我々によって明らかにされたHLA-ペプチド及びTCR-TCTリガンドの結合に関する法則性を利用することにより、ヒト成熟T細胞における免疫学的分子擬態の生理的、病理的意義を解明することを目的とした。そのために先ず、BCGa蛋白の第84-100残基(EEYLILSARDVLAVVSK)をHLA-DR14拘束性に認識する3種類のヒトTh0クローンBC20.7,BC33.5,およびBC42.1を樹立した。1残基置換アナログペプチド、および交叉反応性を示す可能性のある自己ペプチドをデータベースより検索して合成し、それを用いて抗原提示細胞(APC)の存在下にT細胞クローンを刺激し、その応答を観察した。また、クローン化されたT細胞のみならず、末梢血T細胞レベルでもpartial agonismやTCR antagonismが存在することを確認するために、すべてのポジションが19種類の残基から構成される9-19merのdegenerate peptides(X9,X11,X13,X15,X17,X19)を合成し、PBMCに対するそれら自体の刺激効果、ならびにpolyclonalな末梢血T細胞応答に対する効果を観察した。その結果、(1)第93残基AspをTyrに置換したアナログペプチドD93Y、および自己コネキシン26ペプチド断片(IMILVVAAKEVWGDEQA)は、それ自体では増殖誘導活性を示さなかったが、サイトカイン産生を誘導すると同時に、in vitroでそれぞれBC33.5およびBC20.7の寿命をクローン特異的に延長させた。この現象に伴って、Bcl-xLの発現増強が認められた。(2)Xnペプチドは、末梢血T細胞に対してpartial agonism活性を有しており、同時にpolyclonalな応答に対するantagonism活性も有していた。これらの結果より、成熟T細胞レベルでも部分アゴニストペプチドによる寿命延長は起こりうる、すなわちpositive selectionは胸腺外でも継続的に起こりうると考えられた。
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