研究概要 |
B細胞は、CD5分子を発現しているB1細胞と発現していない通常のB(B2)細胞に大別できる。B2細胞は主に獲得免疫に関与するのに対して、B1細胞は自然免疫に関与し、外来抗原のみでなく自己の成分とも交差反応性を示す多反応性抗体を産生する。我々はマウスB細胞の解析から、代表的自己免疫疾患の一つである全身性エリテマトーデス(SLE)における自己抗体産生がB1細胞に由来することを見いだしている。最近、アポトーシスに関与するFasの遺伝子異常を持つMRL/lprマウスの解析から、自己抗体産生B細胞の出現にFasの機能異常が関与している可能性が示唆されている。しかしながら、Fas遺伝子異常をもたないSLEモデルマウス系やヒトSLEにおいて、自己抗体産生B細胞の出現に実際にFas-FasLシステムの異常が関与しているか否かは明らかでない。我々は、この点をSLE自然発症系の(NZBxNZW)F1マウスを用いて解析した。その結果、自己抗体は刺激を受けてもFas発現能の低いアポトーシス抵抗性のB1細胞から産生されることが明らかとなった(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:9291-9295,1997)。正常マウスの腹腔に見られるB1細胞もやはりFas低発現でアポトーシス抵抗性であったが、自己抗体の産生は認められなかった。B1細胞は正常個体では自然免疫に関与する細胞群で、抗原に低親和性のIgM抗体を産生するが、SLE自然発症マウスではB1細胞は、加齢に伴う病態発症に相関して、産生する抗体のクラスがIgMからIgGに変換し、抗体遺伝子の可変領域に多数の体細胞突然変異を生じると共に、親和性成熟と選択、クローン性増殖を経て、病的自己抗体を産生するに至ると考えられる(Int.Immunol.9:771-777,1997)。このようなB1細胞の病的分化には、いくつかの遺伝的要因が必要である(J.Immunol.159:992-997,1997)。現在、この点に関し、遺伝学的、細胞学的ならびに分子免疫学的に解析を進めている。
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