本研究では、我々が発見したMHCクラスI関連遺伝子MR1を中心に解析を行ない、MHC関連遺伝子産物の機能の解明を目指す。ヒト及びマウスMR1の詳細な比較:ヒト及びマウスMR1cDNAより予測されるアミノ酸配列を比較すると、非常に特徴的な保存性が明らかとなった。即ち、α1及びα2ドメインのヒト、マウス間でのアミノ酸残基の一致は、90%近い値を示した。古典的MHCクラスI分子においては、α1及びα2ドメインは、ペプチド結合ドメインを形成しT細胞レセプターと相互作用する重要なドメインである。また、MR1の保存性について、サザンブロット解析により検討すると、種々の哺乳類DNAでMR1陽性バンドが検出され、哺乳類においては広くMR1遺伝子が保存されていることが推測された。マウスMR1遺伝子の染色体における存在位置は、FISH法により1H1であり、これは、ヒトMR1の染色体位置1q25に相当する位置であることが判明した。古典的MHCクラスI遺伝子群との比較:我々は、古典的MHC遺伝子及びMHC関連遺伝子群の起源を探る目的で、系統発生的に原始的な動物のMHC(関連)遺伝子群を解析しているが、今回、最も原始的な有顎脊椎動物の一群である軟骨魚類より古典的MHCクラスI遺伝子の単離に成功し、詳細な解析を行なった。軟骨魚類の古典的MHCクラスI遺伝子とヒトMR1を比較すると、α1及びα2ドメインで40%を超える比較的高いアミノ酸残基の一致が観察された。MR1分子は、α1及びα2ドメインに関して、軟骨魚類からヒトまでの古典的MHCクラスI分子と比較的高い類似性があることが明らかとなった。哺乳類MR1のα1及びα2ドメインにおける例外的に高い保存性は、これらのドメインと重要な分子との相互作用の存在を推測させる。
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